ごあいさつ

 無機-有機複合材料は、(1)無機物単体あるいは有機物単体には表れない物性や機能を有する、(2)無機物の長所と有機物の長所とを併せ持った材料を得ることができる、などの理由で近年大きな注目を集めています。本領域では、無機-有機複合系の中でも、ゼオライト、セピオライト、ポーラスシリカなどの一次元無機包接格子や、粘土鉱物や金属酸化物ナノシートなどの二次元無機包接格子のような、低次元無機包接格子と有機化合物との複合系を研究対象にします。

 本領域は、以下に示す三つの分野のスペシャリストを糾合し、相互の交流・共同研究を活発化することで、レアメタルフリーな、あるいはこれまでの材料では実現できなかった画期的な光機能材料を創製していくことを目的に発足しました。そのために、「無機化学」、「有機化学」、「光化学」といった、これまでの分野の枠を超えて、研究者が相互に交流できる研究会やシンポジウムを企画してまいります。詳細はこのホームページや「化学と工業」誌上でご案内致しますので、多くの方の積極的な参加をお待ち申し上げております。

低次元無機包接格子のデザイン

 低次元無機包接格子を“ゆりかご”に有機分子を異方的に組織化し、高度な光物性を発現させることで,新しい光機能材料を創出します。この目的に適した低次元無機包接格子のデザインを進めます。

光機能性有機化合物のデザイン

 低次元無機包接格子と複合化し、次元性や異方性を制御した際に、顕著な光物性を呈する有機化合物を開発します。本領域では、発光素子・光電変換素子・表示素子・非線形光学素子など、現在希少金属を含む材料により作製されている素子の素材を、本質的には再生産が可能な有機材料と、入手が容易で安価な無機材料との複合体で置き換えられるようにすることを目指しています。

低次元無機-有機複合系の構築・アッセンブリー技術の創出

 低次元無機化合物によりもたらされる包接空間を利用した、有機化合物の処理加工・アッセンブリー技術を創出します。究極の光センサーとも言える生物の視覚機能においては、レンズ、センサー、ハーネス、データ処理の全てが有機材料により執り行われています。このことは、適切な処理加工技術、アッセンブリー技術が創出されれば、有機物の光学材料としての可能性が大きく拡がることを示しています。

山口大学 大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻 教授 川俣 純